10年ほど昔、叔父が胆石症で入院した。
胆石とはその名の通り肝臓に石が溜まってしまう病気のこと。
羽振りの良い叔父なので、良い物を食べすぎた結果だろう。
術後の叔父はずいぶんと痩せてしまったが、かえって男前になっていた。
(そして現在は元気に隠居生活を送っている)
お見舞いついでに、執刀医に叔父の身体から出てきた石を見せてもらった。
シャーレに入った黒い丸みを帯びた黒っぽい石が、ころころ10粒ほど。
水槽に入っているちょっときれいな砂利っぽかった。
叔父の妹である母は
「せめて宝石だったらよかったのに」と笑った。
まったくもってその通りだ。
苦しんで摘出されるなら、せめて宝石が出てこないと割に合わない。
そんな叔父の手術から数年後、母親と行った真珠のミュージアムで叔父の胆石と再び再開する。
正確に言うと、出来損ないの黒真珠の小粒が展示されていた。
アコヤガイの殻をお皿にして積まれた黒真珠の歪な小粒。
あのシャーレに載せられた胆石を彷彿とさせた。
他の来館者は「キレイ」「ほしい」というのに、
私たちは「おじさんの胆石だ」と笑うからとんだ不届きものである。
考えてみれば、アコヤガイの身体に入った小石や寄生虫が真珠の核になるのだから
人間の胆石とあまり変わりがないのでは?
違いは、宝石的価値があるかないかだけ。
もしも人間を支配する強大な宇宙人が現れたら、
私たち人間の胆石は宝石として流通するのだろうか?
嫌だなそんな美的センスを持った宇宙人なんて……