私の実家は飲食店でした。
父が焼き台の前で肉を焼くときに、味付けで肉に塩をぶわっと撒くので地面は常に塩まみれ。
その塩は直接排水に行くので、父は定期的に排水枡の中に溜まった塩と油の塊を柄杓で取り出していました。
(父はこの掃除をドブさらいと言っていた)
柄杓で汲み取られた塩と油の塊
一度うっかり触ってしまったのですが、業務用の食器洗剤で洗っても油っぽさがなかなか取れませんでした。
お店は夜に開店だったので、この掃除は昼間にやっていました。
小学生の時は昼間に家にいることが多かったのでよくこの悪臭を嗅いだものです。
塩+油+下水臭…特に夏は強烈。
ひどい匂いですが、これをやらないと下水が詰まってしまうので
店長としての義務だと父は言っていました。
去年の暮れに30年以上続いた実家のお店は円満閉店しました。
あの悪臭は昼間に家に居ることがなくなった高校生以来嗅いでいません。
でもあのもわっとした臭いは忘れられません。そのぐらい強烈でした。
小学生の夏休み。
友達と近所の海で泳ぎ、家に帰ってぼんやり時代劇の再放送を観る。
リビングの窓を開けて涼しい風を浴びながら大の字で昼寝をしていた時に、
突然やってくるあの悪臭。
もう二度と嗅げないのだなぁと、少し寂しく思う夏の終わりでした。